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近所の人に、まず一声。

郷土料理を今に伝える「卯月の会」

境 嘉代子さん

 

地元の自動車やさんに嫁いだ境さん。

市の食生活改善推進員になったのをきっかけに、仲間たちと「卯月の会」を結成。

砺波の伝承料理を研究し、多くの人にその素晴らしさを伝えようと、精力的に活動しています。

 

「せっかく巡り会えた、ご縁だから」

境さんが立ち上げた「卯月の会」は、砺波市が設置している「食生活改善推進員」のメンバー有志によって構成されています。 食生活改善推進員は、市内21地区から2名ずつ選ばれ、健康を守るための食事や料理法を普及する活動を行います。

最初は面識のない人たちも、砺波の食文化を研究し、一緒に活動していくうちに、仲良くなっていきました。 でも、この活動の任期は2年。

「せっかく巡り会えた仲間たちと、このままバラバラになってしまうのは、何かもったいないと思ったんです」 そこで、2006年4月、 食を通じた交流活動をする「卯月の会」を立ち上げました。最初は10名でスタートしましたが、現在は約20名が活動しています。

2015年3月には空き家を再生した「農家レストラン大門」をオープンし、女将として奮闘しています。


郷土料理に力を入れています

中嶋家でのホタル鑑賞会にて赤米おにぎり食生活改善推進員の任期中も、郷土料理を親子で学ぶ教室などは実施していたそうですが、「卯月の会」として自主的に活動するようになってからは、さらに伝承料理に力を入れるようになったそうです。

チューリップ公園内にある、砺波の典型的な伝統建築・寄せ棟づくりの「中嶋家」で、毎年行われているホタル鑑賞会では、「砺波のいいところ、自慢の場所と、おいしいものを一緒味わってもらいたい」と、郷土料理のお弁当を提供しています。

大門素麺、赤米ごはん、なすの田楽、きゅうりの胡麻酢和え、べっこうなど、季節の素材を活かした上品な味付けの料理は、非常に好評です。

このほか、県外からのスペシャルな観光ツアーや視察、子どもたちの体験学習など、1年を通じて、様々な場面で砺波の郷土料理を紹介しています。


信仰と深く結びついている、砺波の食文化

郷土料理を御膳で提供「砺波の食文化は、『信仰』と深く結びついています。特に、親鸞さんの命日に、1年の収穫を祝い感謝する『報恩講』料理は、この土地ならではのものですね。地元の人たちは『ほんこさま』と言います。」 旬のものをいちばん美味しく食べられるように工夫した調理法、お坊さんのありがたいお説教を聞いて、近所の人たちと一緒に食べるスタイル…この土地に何百年も引き継がれています。

「食べ方、並べ方、時期なども、地区ごとに少しずつ違うんです。最近は、卯月の会のメンバーで、お寺巡りをして調べているんですよ。」

3回忌、13回忌、50回忌などの法要後の食事(=おとき)も、それぞれにしきたりや決まりがあって、御膳の色や料理の並べ方、座布団なども変わるそう。

昔から、先人や先祖を敬い、家族を大切にしてきた砺波地方ならではの食文化は、調べれば調べるほど奥深さを増すそうです。


最後までありがたくいただく

夏場に取れる野菜を干して保存食にしたり、雪の下に野菜を置いて甘みを増したり、お餅や素麺を寒風にさらしたり…。砺波の人々が昔から食べ続けて来た郷土料理には、旬の恵みの美味しさをシンプルにいただくものだけではなく、雪や寒さを利用してさらに美味しく食べる工夫をしたものも多くあります。

赤いもの葉っぱを干した「いもじ」を、味噌で炒りあわせる「いもじのよごし」は、白いご飯のおともにベストマッチ。かぶの浅漬けを鍋で炒る「いりごく」や、漬けすぎてすっぱくなったたくあんを酒粕で煮る「こうこの煮たが」など、砺波の郷土料理は、食材を最後までありがたくいただく知恵の結晶なのです。

いもじのよごしにしんとじゃが芋の煮物酢ずいききゅうりの粕和えとべっこう

 


砺波に移住を考えている方へ

手間をかけて、自然に感謝をすることも大切です。手間をかけて、自然に感謝をすることも大切です。四季折々の自然の移り変わり、旬の食を楽しむことができる砺波。しかし、自然の恵みを受け取るためには、手間をかけたり感謝をしたりすることも大切です。

「雪よかし(雪かき)は、本当に大変です。でも、この雪のおかげで、砺波平野に豊富な美味しい水がもたらされているんです。そして、カイニョ(屋敷林)のメンテナンスも結構大変です。定期的な剪定だけでなく、秋の落葉掃きなどもあります。でも、このカイニョのおかげで、暑い夏でも風通しよく、涼しく過ごす事ができるんです」 それから、ご近所付き合いや地域のつながりに関して、境さんはこう話します。

「干渉して欲しくないと思われる方には、面倒なことかもしれません。でも、お互いのことを気遣いながら生活していくというのは、とても心強いことです。」

「やさしくて、温厚で、面倒見のいい人が多いので、分からないことがあったら、遠慮なく近所の方に聞いてみるといいですよ。一度声をかけると、あちらから気にかけて、声をかけてくれるようになります。逆に声をかけないと『放って置いて欲しいのかなぁ…』と変に遠慮をしてしまって、本当に助けて欲しいときに困ることがあるかもしれません。だからまずは、一声ですね。」

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