人づきあいの心強さ、温かさに目覚めました。
小学校教諭
小谷内 智信さん
大学卒業後、講師として砺波地区の小学校に通っていた頃から「住むなら砺波だ」と思っていたという小谷内さん。
3年かけて探した古民家を購入。
リフォームは最小限にして、家族5人でのびのびとお住まいです。
生まれは福井県。幼稚園からは、お隣・高岡市の新興住宅地に住んでいらした小谷内さん。
「親と一緒に住んでいたのは、庭もそんなに広くない、密集した団地でした。深い近所づきあいがそんなにあったわけではないです。かといって田舎に憧れがあったということもないです。」
結婚を機に、住み慣れた実家を出ることになった小谷内さん。
大学を卒業してすぐに赴任したのが砺波地区の小学校だったことから、砺波周辺の知り合いが増え、住みやすいまちというイメージのあった砺波市内に、アパートを借りました。
新婚生活をスタートさせたアパート暮らしは6年続きました。
「妻が、『古い家のつくりってステキだよね?』『近所づきあいって楽しそうよね?』と、田舎の暮らしに積極的だったので、だんだんと私も、そういうところに住みたいなと思うようになってきました。」
数年後、古民家を探し始めます。
「同い年の講師仲間が砺波に住んでいて、よく、お酒を飲みに遊びに行っていたんですね。
古いつくりの広々とした家に、あたたかいご家族。すごくいいなぁと思ったんです。」
最初はパソコンのソフトで理想の家を作って楽しんでいました(笑)。
でも、新しい土地に新しい家を建てると、ローンも大変ですしね。」 いい中古物件があれば…と、地元の不動産業者に頼んで、探してもらうことにした小谷内さん。
「いろいろな物件を見せてもらううちに『ちょっとリフォームすれば、全然問題なく住めるやん!』という気持ちになってきました。新築に比べてコストも安いですしね。」 しかし、気に入った家が見つかるまで、2年。
さらに、手続きやリフォームに1年を要し、結局、今の住まいを手に入れるまでに3年かかったそうです。
「真ん中にある柿の木も気に入っています。この家は『あんさま(長男)』の家に比べて小さいんですけれども、普通に考えればかなり広々しています。
とにかく、家の中でも外でも、子どもたちがのびのびと遊べるのがいいなぁと思って。」実際、3人のお子さんたちは、家じゅうを駆け回って遊んでいるそうです。
もとの家主さんは東京にお住まいだったそう。「初めてお会いしたときに、本当にいい方だというのが伝わってきました。あちらもうちの家族をそう思ってくださったようです。」
その家主さんは、小さいお子さんがいることなどを配慮してか、仏壇や蔵の中の農具などを、小谷内さんが入居する前に撤去してくださったそうです。
「本当は、蔵の探索を楽しみにしていたんですが(笑)。処分するとなると大変だろうからと、気を使ってくださったのだと思います。」
古民家のリフォームにお金をかける方もいらっしゃいますが、小谷内さんは、暮らすために必要な最低限のリフォームで済ませたそうです。
「とは言っても、水廻りと壁面は全部リフォームしましたけどね。」 この家に住んで8年。一昨年、雨漏りするようになったので「瓦だけはちゃんとしとこう」と、全部葺き替えられたそうです。
「もともと囲炉裏があって、最初は、炭で岩魚などを焼いて楽しんでいたのですが、小さい子どもが危ないので蓋をして、じゅうたんを敷いています(笑)。
もとの仏間は畳敷きですが、他の部屋は基本的にじゅうたん敷きですね。」 「それから、小学年の娘が、家の奥の長屋を『私の家にする!』と言って、何やら考え始めています(笑)。もともと、バーベキューをしたりする場所だったんですが(笑)。」工夫したり直したりしながら、楽しんで暮らしていらっしゃるのが伝わってきます。
団地住まいの長かった小谷内さん。今までは、深い近所づきあいや地域のお祭り・行事などがほとんどない生活だったそうです。
「もともと、交友関係を広げるタイプではなかったのですが、この家に住んで、地域の方々とつきあうようになって、明らかに価値観が変わりました。
朝起きたら、玄関に野菜が置いてあることもありますね。子どもと散歩していると、近所のおばあちゃんが『かきやま』をくれたりすることも(笑)。」 でも、慣れるまでは難しいなと思うこともあったそうです。
「若い人が多い地域ではないので、振興会や消防団など地域の役割もさせていただいています。定期的に会合等もありますが、自分の時間の都合に合わせて、できる限りのことをやっていこうと思っています。それに、役が回ってくるというのは、それだけ期待されているということでもあるんですよね。
一生懸命やれば応援してくれる人たちがいるって、心強いことなんです。」 人づきあいの心強さや温かさに目覚めた小谷内さん。
「自分の心の持ち方次第で、すごく住み良い空間に変わっていくんです。」と、力説されていました。
「近々、お宮が修繕されます。その費用を賄うため一軒あたりの負担金もお宮だけに高額です。
でも、町内で毎月積み立てをしているので、大きな負担にはならないのかなあと思っています。
それから、えざらいや草むしりは、よっぽどのことがない限りは出ないといけません。
作業の後の慰労会は、地域の大切な交流の場です!!」 自分たちの地域を自分たちで、美しく保ち、守るという意識の高い砺波。他から見ると少し珍しいかもしれませんが、特に不満はないそうです。
「ひとつ残念なことがあるとすれば、『獅子舞』の存続について様々な意見がとびかっているのですが、伝統あるものだけに、入居して約8年の私にはなかなかはっきりとした考えがもてず・・・。」もっと、地域に入り込みたいという思いが伝わってきます。
地域の人たちとのふれあいを大切にしながら、無理のない範囲で工夫したり準備したり。身の丈にあった散居村暮らしを楽しんでいらっしゃるようです。